私が15才になった頃から、母は私の嫁入り支度を始めました。
自分の時に、両親が他界していたため、仕度が充分にしてもらえず淋しい思いをしたからと、私にはたっぷり仕度するつもりで始めたのです。
母の一番の思い入れは、着物でした。
式服、色紋付き、小紋に道行き、それに合わせた帯と小物、草履にバッグまで、母の頭の中には、嫁入りの時に私に持たせる和箪笥のレイアウトが広がっているようでした。
私は既にファッションデザイナーを目指して勉強を始めていましたし、母が思うような着物の時代は終わっています。着物を着る機会など益々なくなると主張しましたが、母は聞き入れませんでした。
私の嫁入り支度は、母の夢。そう理解して、母が着物を揃え続けるのを許していきました。
さて、着物は着ないものの、何かに対して充分な準備をすること。これは少女時代の私の頭に、しっかりと記憶されました。
それも、早くから始めると、充実したものとなり、大変心が満足することになると覚えたようです。
何か新しいイベント的なことをするとなると、早々と準備を始め、あれもこれもと買いだめをしようとします。
若い頃は、その買いだめが過ぎて、使わない物まで揃えていました。
そう、母と同じく、心が先走りしてしまい、結果無駄になる物を買ってしまっていたのです。
それは、些細な場面でも同じ。夕食の仕度をしようと買い出しに行くと、一度に食べきれないほどの食材を買ってしまい、それを食べることが負担になってしまったり。
学び、改めるまでには、随分と時間を要しました。
子供は、親に言葉で教えられたことよりも、態度と行いで見せられたことの方が、しっかりと身に擦り込まれます。
これが悪しき習慣となると、改めるには意識を持って努力していかなければなりません。
努力が報われずに改まることがないと、親を恨んだりもすることにもなるでしょう。
ただ、忘れてならないのは、意識を持てば変えられるということ。自分の習慣ですから、たとえ親から受け継いだ価値観であっても変えられます。親を恨むのは、怠慢なこと。甘えているのです。
自分の行いや振る舞い、無意識の癖などに、意識を置いて生きる習慣を身に付けましょう。
新しい体験の度に、自分を見つめて、新しい方法にチャレンジするのです。
そうやって見つけ出す自分の価値観は、見つける度に楽しい気分になり、とっても居心地が良く快適です。
人生の半ばを過ぎても、まだまだ見つかる母から受け継いだ価値観。
その一つひとつが愉快で面白く、そこに母を見いだします。
母が揃えた中でも草履は、履かないまま色あせてしまいました。母は大変残念がっていましたが、“揃えることが楽しかったので、充分に楽しんだから良かったかな”と、時間と共に母自身が自分の古い価値観を卒業していました。
たくさんの着物は、いちどしっかりと虫干しをした方がいいでしょうね。母と思い出話しをしに、実家へ帰りましょうか。
合掌。
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